CEOメッセージでも觸れましたとおり、現在のコンシューマ市場は、DLC市場の拡大や新世代機(現行機)への切り替え時期を迎えるなど大きく変化しています。
當社においては、3年前、DLC対応の遅れや海外外注の品質低下などの問題が発生し業績に影響を及ぼしましたが、改革の「第1ステージ」として迅速に改善策を実行したことで、2015年3月期の収益性は大きく向上し、一桁であった営業利益率は20%臺まで改善しました。
コンシューマ市場の今後については、株式市場でも見方が分かれています。一部の投資家は、現行機の登場に伴う開発費の高騰やモバイルコンテンツの臺頭により、収益性の下落を懸念しています。一方、多くのソフト會社がコンシューマ市場から撤退しているため、高品質と資金を確保できる會社は殘存者メリットを得られると期待する意見もあります。
私の判斷は後者と一致しています。その根拠は、1)コンシューマは2019年においても未だゲーム市場の約30%を占める主要なマーケットであること、2)當社が多數の人気コンテンツを保有していること、3)當社がラインナップ拡充のための開発人員と資金を十分確保していること、4)當社がDLCなどの新しいビジネスモデルに即応していること、です。その結果、営業利益率は20%以上を確保しています。
今後の課題としては、営業利益率20%の高収益體制を維持しながら、売上規模を拡大し中期経営目標である営業利益累計を達成することです。
そのため、當社では、「DLCの強化」および「60ヵ月マップの本格運用によるタイトルラインナップの増強」の2つの施策を推進し、中長期的に持続的成長を可能にするタイトルポートフォリオを形成していきます。
コンシューマビジネスで営業利益率20%を達成した要因は、上記に加えて、2年前に掲げた「外注から內作への移行による品質の向上およびノウハウの蓄積」も大きく、売上原価の削減効果として前期比で41億円ありました。
一般的に、外注は內作と比較して、固定費や技術面の観點からリスクが低いと認識されています。しかしながら、ビジネスモデルや技術変化の激しいゲーム業界では、外注會社との仕様等の契約條件の変更に時間を要したり、技術対応に遅れた開発會社が増加したことなどにより、市場ニーズに合致したタイトルが適宜発売できないケースが散見されます。
したがって、私は、現行機の登場やDLC市場の拡大など市場環境の変化が激しい現況においては、內作中心の開発體制に移行することで、現行機の最新技術を習得し品質を向上させるとともに、追加コンテンツの戦略的投入など運営ビジネスのノウハウを蓄積することが得策であると判斷しました。加えて、開発人員の配置管理を強化し人員稼働率を向上させる52週マップを運用することとしました。これらの取り組みも、コンシューマビジネスの営業利益率20%達成に貢獻しました。
開発者數と內作比率の推移
DLCの更なる強化により、當期のDLC売上比率約26%を更に改善していきます。DLC比率向上の目的としては、1)本編DLC配信によりパッケージ製造コストの削減や在庫リスクの回避、2)小売店でのパッケージ販売が難しい過去作を本編DLCで配信することによる収益機會の増加、3)継続的な追加DLCの配信によるユーザーの囲い込みおよび追加収入の長期安定的な獲得、などが挙げられます。これらは、投資家の皆様が指摘するコンシューマビジネスでの開発費の高騰や(ヒットタイトルに依存する)ボラティリティの高さへの懸念に対する対策の1つです。
DLC戦略の強化
2年前から推進してきた改革の成果については、特に1)2)により本編DLCが伸長し、當期のDLC売上比率は2年前の11%から、18%、26%と年々向上しています。その結果、収益性が向上し、當期の売上原価の削減効果は10億円となりました。
DLC売上比率推移(當社と市場平均の比較)
今後は1)2)に加えて3)の強化により、當社のDLC比率をコンシューマ市場全體のDLC比率50%に比肩する數字にしていきます。具體的には、大型タイトル『モンスターハンタークロス』や『ストリートファイターV』のパッケージおよび本編DLCの並行販売や、Steamなどのオンラインプラットフォームを通じて新興國にも本編DLCを販売するほか、大型タイトルを発売後、追加DLCを戦略的に逐次投入し、ライフタイムを長期化していきます。
中期的な戦略マップ(60ヵ月マップ)の本格的な運用を徹底することで、持続的に成長可能なタイトルポートフォリオを形成していきます。具體的には、1)現行機および舊世代機の雙方をにらんだマルチプラットフォーム対応を推進するとともに、2)當社の保有する人気シリーズを約2.5年ごとに発売していきます。
機種別販売本數比率の推移
長期ポートフォリオ戦略
理由として、1)は、1つのタイトルを、人気はあるが普及途上の「現行機」と普及臺數は多いが人気がピークアウトした「舊世代機」の両機種で発売することが収益の最大化になるからです。2)の理由は、大型タイトルの開発は通常3~4年を要するため、ヒット作を少數しか保有していない場合、毎期シリーズ作品を投入することが難しく、業績の谷間ができてしまいます。したがって、業績を安定させるには多數の人気作品を保有するか、開発期間を短縮することが重要だからです。當社は、業績の安定化および成長の両面を追求するため、上記1)2)を進めることで、単年度の投入タイトル數を増加させます。並行して、DLCを強化することにより、収益の最大化と収益性の改善の両方を実現します。
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