東証のコーポレートガバナンス?コードの適用開始に伴い、社外取締役の役割が従來以上に重みを増しています。
「社外役員は取締役會で本當に厳しい意見を述べているのか?」、「社外役員は実際にどこまで機能しているのか?」
そうした問いはこれまでも一部の投資家の方々から寄せられていました。そこでカプコンでは守永社外取締役と機関投資家によるスモールミーティングを初めて開催しました。本ページでは、両者で交わされた議論の一部をご紹介します。
私の社外取締役としての役割は企業価値の向上に資することだが、企業価値には「経済的価値」と「社會的価値」の2つの側面があると考えている。
「社會的価値」には色々な面がある。ゲームで例えれば、突拍子のない話ではあるが、もしゲームをすればするほど、「頭が良くなる」、「性格が良くなる」、「ボケ防止になる」、といったものがあれば、「社會的価値」は大きく向上するし、それに伴い「経済的価値」の上昇にも結びつくだろう。
カプコンにおいても「経済的価値」と共に「社會的価値」にも注目していきたい。
カプコンの取締役會では、社外役員(取締役?監査役)の多さと多様性を評価している。オーナー會社ということで創業者の獨壇場かと懸念していたが、そのような傾向は全くなかった。取締役會の議論は活発だし、また數字を主體とした経営の「見える化」によって取締役會の資料も非常に分かりやすくまとまっている。
本年の買収防衛策の再提案についても、取締役會で様々な議論があった。これまでの企業経営の経験から、買収には株主の利益に繋がるものとそうでないものの2種類がある。後者の場合、企業価値が損なわれ、結果として株主の損失になる可能性がある。私は、このような可能性を排除するには同策が必要ではないかと考えた。最終決裁を株主総會での株主の判斷に委ねることで株主の利益は擔保されたと考えている。
スモールミーティングで使用した資料
買収防衛策を発動する際に、臨時株主総會を開催することになっているが、これは買収防衛の正當性や透明性を擔保していることにはならないのでは?仮に75%が発動に賛成で25%が反対の場合、25%の少數株主の利益は損なわれるのではないのか。
実際には発動前の段階で様々な情報開示をしていくことになるので、その中で反対の株主が持ち株を売卻できる余地はあると考える。一方、買収防衛策の発動の是非を問う臨時株主総會にまで至ることは最終手段であり、それを主旨とはしていない。當社ではコンテンツ開発の源泉は「人」であり、開発費は大部分が人件費である。この當社の根幹を擔う開発者の動揺を防ぐため、買収者との議論の場や時間を設け、開発方針を議論したいというのが主旨である。
また、買収防衛策が発動された場合の獨立委員會について、投資家から「獨立委員會は無意味であり、取締役會で全て判斷すべきだ」という意見を受けたが、監査役會設置會社である當社としては、監査役の意見を決議に反映するためにも獨立委員會は有効だと考えている。また、「完全に社外のメンバーが有事の際に役に立つのか」という批判もあった。この點は受け入れ修正をしている。
社外取締役には中立性が重要だが、任期が長期に及ぶと會社側の立場になってしまうことはないのか。また、それを防ぐための対策を教えてほしい。
外部目線は重要だが、社內とも一定の関係性を構築しておくことも重要である。前提知識や情報がなければ適切な発言もできず、説得力もない。私(守永)自身の経験を踏まえてバランスのとれた立場を維持したいと考えている。
社外役員は監査役も含め多様な分野から選任しており、透明性の確保に問題はないと考えている。実際に取締役會においては非常に厳しい指摘をいただいており、中立性の低下は懸念していない。
社外取締役の選任基準を教えてほしい。もう少しコンテンツビジネスに詳しい方を選任すべきではないのか?,F時點では外部から見ると「友達」基準で選任しているようにも見える。また、社外取締役の交代の基準はどのように考えているのか。
現狀、選任に関して、外部に明示した基準はないが、「各分野で最高レベルの"良識"を持つ専門家に、當社の経営?事業活動を冷靜に判斷していただくこと」を念頭に、可能な限り多様な分野から人選している。友達関係で選ぶということは毛頭ないが、皆様の懸念を払拭できるよう、今後は選任基準について更なる改善を図っていきたい。
オーナー企業のリスクや課題についてどのように考えるか。
オーナー企業だからこその良さもあると考えている。獨裁者になってはいけないが、決裁するのは取締役會でありオーナー個人ではない。ガバナンスの仕組みが確立していれば、オーナー獨自の決斷力の速さ、當事者意識、改革力は企業の成長にとって有効である。カプコンのように數値の「見える化」が進んでいれば外部からのけん制は充分可能である。
萬が一、オーナーが間違った方向に進んでいる場合、社外取締役が第三者的に妥當性を指摘できるのか。
社外役員にとって、辻本會長は絶対的な存在ではないので、私を含め社外役員は、取締役會で遠慮することなく納得するまで発言している。また、辻本會長も我々の意見を前向きに聞き入れている。社外取締役制度を2001年から早々と導入していることを踏まえると、辻本會長自身が異なる意見を積極的に求めているものと考えている。
ガバナンスを議論する際に「投資家が求めるガバナンス」と「會社の経営が上手くいくためのガバナンス」がある。この2つが同じ方向であれば最善であるが、最も重要なことは企業の経営のクオリティが高まることである。名経営者ほど力が強く、獨裁になりやすい。そのようなリスクを回避し、會社の経営が迷走しないよう活発な議論をお願いしたい。
承知した。今回、このような対話は私にとっても初めての試みであり、的確に回答できない箇所もあったが、頂戴したご意見を踏まえ、経営の監視?助言を行っていく。また、次回、このような対話の機會を設定できればありがたい。
ご出席いただいた投資家の皆様
荒川康氏(DIAMアセットマネジメント株式會社)/巖田直樹氏(野村アセットマネジメント株式會社)/大谷章夫氏(東京海上アセットマネジメント株式會社)/忍足大介氏(JPモルガン?アセット?マネジメント株式會社)/城戸謙治氏(みずほ信託銀行株式會社)/中野次朗氏(日興アセットマネジメント株式會社)/滑川晃氏(シュローダー?インベストメント?マネジメント株式會社)/山口威一郎氏(大和証券投資信託委託株式會社)/米澤昌之氏(三菱UFJ國際投信株式會社)
[氏名の五十音順]
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